10 Jan 2010

鳥のミルク的議論

私が一緒に共同生活を営む同僚5人はそれぞれ、リトアニア、ルーマニア、ポーランド、グルジア、インド出身です。文化も言葉も習慣も年齢もばらばらながら、それなりに何とかまとまってうまくいっているわけです。
ところが時として、私とインド人君が全くもって話に着いて行けない瞬間というものが訪れるのですが、それはどんな時でしょう〜。クイズ。


答えは残りの4人がソビエト時代の話、もしくは東欧文化の話をするときですね。みんな昔話を、あの時はこーだあーだ、私の国ではこーだった、俺の国ではどーだった、とするわけです。例えば、テレビでアニメの放送時間はポーランドでは15分だったけどリトアニアでは1時間だった!ソビエト版ニセミッキーはこーだった、あーだった、などなど。4人がそろって「あーそだよね」と盛り上がっている時、私とインド人は完全なる異邦人というか、全く持って蚊帳の外というか、地球をちょっと訪れてみたエイリアン、といった感じになるわけです。彼らの話の話題がわかる時はいい方で、時には何について話しているのかさえわからないこともよくあります。

この前はこれの話題で4人が完全に盛り上がっていました。チーム蚊帳の外の相棒、インド人が休暇中のため私は一人寂しくチーム蚊帳の外をやっていました。

リトアニア人姉さんが休暇のお土産に買ってきた「Anytime」でございます。中身が柔らかいマシュマロのようなバニラ味のチョコレートです。マシュマロではないのですが、日本でいえばアイス「雪見だいふく」の外側部分が入ったチョコレート、というか、なんとも美味なお菓子でした。後々の説明に寄ると、旧ソビエト圏では有名なお菓子らしく、色々な国で買えるそうですが、商品名がそれぞれの国で異なるとか。それでもって4人は「Anytimeってなんだー本来ならば「Bird's Milk」(鳥のミルク)だろー…いやうちの国ではこーだ、私の国ではあーだ」とこのお菓子の商品名論議を交わしていたわけですね。熱が収まった10分後ぐらいにグルジア人氏が通訳してくれました…。わざわざありがとうね。ちなみにロシア語で「Bird's Milk」とは実在するはずがないほどのすばらしいもの、という意味らしいです。

でもみんな仲良く話しているばかりでもなく、時々それぞれの国の対ロ関係の話題になるととても険悪になります。みんなそれぞれのロシアに対する恨みつらみを抱えているようで、それを他の旧ソビエト圏の国民が指摘しようなら、どんよりとした雲が立ちこめます。そうゆう時でさえ私はいまいち何故こんなにも険悪なのかがすぐには理解できないことが多いのですが。この前は私が「Two Caravans」という東欧EU圏からのイギリスへの出稼ぎ労働者たちを題材にした小説を読み、その感想をポーランド人氏とグルジア人氏に話したら、あっそと軽く鼻であしらわれました。「あんたに何がわかるの」っていう感じなんだろうきっと。 


ロンドンは本当に国際色豊で、自分って何も知らないんだ!と刺激を受けるのにのにとっておきの場所です。世界は広いなあ。最近旅行をあまりしていないので、今年は足を伸ばしてどこかに行こうかしら。父が退職して海外に出かけるらしいので、どこかで落ち合うのもいいなあ。

世界は広いが、私の部屋は狭い…しかも散らかっている、の図。 

 

2 comments:

  1. 毎回大変面白く拝見しています。
    米原万里というロシア語同時通訳家にして名エッセイスト。50代に若くして亡くなったのですが、彼女が書いたものに『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』という本があります。これは歴史書としても,また当時のソ連支配下にあった,あるいは影響を受けていた国々、人々のソ連に対する感情、そしてその後のベルリンの壁崩壊後の思いが実によくわかって面白いですよ。

    ReplyDelete
  2. tさん、
    「嘘つきアーニャ」2年前ぐらいに読みました。おもしろかったねえ。「オルガモリソブナの反語法」より全然いいですね。お得意のイーストボーン図書館(!)から借りました。怖くて鋭いネタというか。「two caravans」もイギリスに住む元ウクライナ難民が書いているんだけど、すっごく怖くて鋭いです。でも翻訳はまだみたい。かなり売れているんだけどね。

    ReplyDelete